労働衛生とは

 「労働衛生」は、Occupational Health の和訳ですが、英語でも他の言葉も使うので、occupational, industrial と health, medicine の組合せで、

  • 産業医学(学会など)
  • 産業保健(推進センターなど)、職業保健
  • 労働衛生(国、法など)

  • などの言葉がよく使われます。私の勤務先の「労働保健」管理協会も同じですが、これはそんなに使われないようです。

     「安全」と対になった、安全衛生という言葉も一般的で、「品質」や「環境」で流行のマネジメントシステムは、この分野では、労働安全衛生マネジメントシステム Occupational Health and Safety Management System(OHSMS)と言って、国際標準化の流れもあり、日本でも、1999年4月に労働省が指針を出しました。

    クリーニング屋さんの測定  意外に身近なところでも労働衛生の管理が働いています。
     写真はクリーニング屋さんのドライマシンの有機溶剤を測定しているところです。

     知らない人が多いですが、「事務所衛生基準規則」では

  • 一人当たりの気積(部屋での一人分の空間の容積)は10立方メートル以上
  • 男性用大便所は60人以内ごとに1個以上
  • 小便所は30人以内ごとに1個以上
  • 女性用便所は20人以内ごとに1個以上

  • と定められています。
     貴方の職場は大丈夫でしょうか?

    労働衛生の目的

    労働衛生の目的は、働く人の健康を守ることであり、労働災害、職業病、作業関連疾患の予防と健康増進を目指すものです。

    もう少し詳しく定義を書きますと、

    ILOとWHOの第1回合同保健専門委員会〈1950〉
    職業保健の目的

  • あらゆる職業に従事する人々の肉体的、精神的および社会的福祉を最高度に増進し、かつこれを維持させること
  • 作業条件にもとづく疾病を防止すること
  • 健康に不利な諸条件から雇用労働者を保護すること
  • 作業者の生理的、心理的特性に適応する作業環境にその作業者を配置すること
  • 以上を要約すれば、人間に対し仕事を適応させること、各人をして各自の仕事に対し、適応させるようにすること
  • アメリカ医師会(1971,75)
    Occupational Health Program の機能と活動に関する指針

  • 労働者の作業による健康障害や疾病を防ぐこと
  • 労働者のよりよい環境を維持すること
  • 労働者を体力、知能、性格に応じて適性配置し、効率的に健康かつ安全に作業ができるようにはかること
  • 業務上疾病に適切な医療をあたえること
  • 労働者各人の健康の向上をはかること、など


  •  個人的には、後者の方が判りやすいと思います。

    近代日本の労働衛生の発展

  • 20世紀初期の産業災害と安全衛生の時代
  • 第一次大戦から第二次大戦の戦後に続く職業病と産業中毒を中心課題としながら産業衛生工学などが台頭してきた時代
  • そして現在、すなわち、予防医学、社会保障などが重視される時期

  • に分けてみることができます。
     現在の予防、保障の対象としては職業病だけでなく、一般疾病、とくに生活習慣病(成人病)までを含めています。健康管理では、在職中の病気や死亡を避けるだけでなく、定年後も健康に過ごせるよう考えます。

     対象となる日本の労働者は約 6500 万人で、生涯38年から45年間働きます。人生の大部分があたる訳で、労働衛生の重要さが判ります。

    労働について考える

    じん肺の写真  労働は、肉体的能力を使い、目的意識をもって自然に働きかけ、それを人間の生活に役立つ形に変える活動で、それは動物と人間を区別するものです。
     人間の能力は労働によって形成されるし、労働がなければ近代の文明は生み出されなかったでしょう。

     しかし、労働が人間の体に悪い影響を及ぼしてきたことは、歴史によって証明されています。
     写真は中程度のじん肺の人の胸部X線像で、白い小さい変化が多数あります。

     「社会の特権階級は罹らないのに、作業場、工場、鉱山で労働している人々だけが罹る一群の病気がある。社会の繁栄に欠くことのできないこれらの人々の仕事から、長い期間彼らが手に入れたものは、身体的・知的・精神的貧困だけであった」
    Diseases of Occupation(D.Hunter、1955)
     このことは、次章の「労働衛生の歴史」で触れます。

     労働や仕事という概念は、長い歴史の中で、社会や文化の影響を受けながら、変化し続けています。
     古代ギリシャにさかのぼると、「労働(labor)」は奴隷主のために働くことで、苦痛をともなうものとされていました
     「仕事(work)」は、自分のためになるもので、何事かを成し遂げたという達成感や喜びを味わえるような、職人や芸術家がしていたこととされています。

     労働が仕事と感じられ、有害な影響を受けない、そういう職場を目指したいものです。

    [「労働衛生の歴史」と分離、文章追加、デザイン改訂:2004年1月3日]

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